買いつけの旅のエピソード(knoflik篇)もくじ

ボタン工場を訪ねて ガラスボタンのはなし チロリアンテープのはなし ルーマニアのはなし
mokuji_6.gif
クノフリーク誕生 レース編みの工場を訪ねて

【レース編みの工場を訪ねて】

民族衣装に使われている色とりどりのレースを見たとき、かわいいと思った。チロリアンテープに気を取られてばかりいたけど、あらあらどうして! レースもいいじゃないですか! ということで、探さなくっちゃ。いざ、レース編み工場へ行こう!(ここには9コのお話があります)

【 レース編みの工場を訪ねて 】

1、レースの魅力に気づく

1-R0014163.jpg
最初のころ、レースはピラピラした印象であんまり好きじゃなかった。
チャルカの近く、大阪の繊維問屋街に行けば、白やベージュの、なんとなく下着を彷彿させるようなのが売られていて、そのせいかも。
チロリアンテープの方がかわいいし、使いやすいとも思っていた。
ところが最近はレースも好きで、積極的に探し求めている。
何が起こったかと言うと、チェコのお祭りで、民族衣装にあしらわれているのを見てハタッとなった。
友だちがパリチコバーニー(チェコ語でボビンレースのこと)を習いはじめたのもあって、教室について行って見学したり、先生の凝った作品に感動して、レース編みの魅力に目覚めたのが一昨年のこと。
それは東欧に通い出して7年目のことで、なんとも遅いできごとだった。
最初に気になったのはカラフルな色のレース。
コットンで、時には2色、3色使いで、程よい太さ。
あの苦手な感じ、ピラピラではないのがいい。
手芸問屋でちょこちょこと調達してはお店に並べて、お客さんの反応を見てみよう。

【 レース編みの工場を訪ねて 】

2、レースの使いみち

2-R0014164.jpg
『チャルカといっしょに東欧の手づくり』という本を作った。
そのときに、本の載せるサンプルを自分でもちくちく。
チェコのレースを手に考えた。
どんなふうに使えば、かわいく見えるだろうか? 
しかも、ぶきっちょさんでも大丈夫な、簡単なものがいい。
技術じゃなくてアイデア勝負の、レースの出番はいつ? 
何にしようか?
こうして作ったのがレースをつなぎあわせたブレスレット。 
冬は、手首に巻いてセーターの袖口からちらっとレースをのぞかせたり、夏はブレスレットとしてコーディネートを楽しんだり。
自分でつけていたらこれがけっこう評判よくって、いろんな色のが欲しくなってきた。
これはもうレースを買いに、チェコへ行かねば。
ということで、レース会社へ工場見学に。
お迎えの車の座席のカバーはレースだし、受付のテーブルにはレースで作った花が飾られていた。
なんともレーシーな世界だけど、これがなぜか心地よい。

【 レース編みの工場を訪ねて 】

3、今年で101歳

3-R0014124.jpg
流暢な英語で話し好きのマネージャーと、片言英語でちゃちゃを入れてばっかりの社長が案内役。
会社訪問の例にもれず、歴史の話からはじまった。
レースを作り出してから今年で101年目。
小さな田舎の村の大切な産業として、みんなでがんばってきた。
最近は景気がよくないのと、中国製品に負けっぱなしで、何度か経営の立て直しをし、今では20人が働いている。
日本でどんどん売って欲しい、と話を締めくくった。
どんどんはさておき、どんなものがあるのか見せようか、と社長が奥から持って来たのは、レースのパターン帳。
古い物だ。
「ひゃぁ〜、すごい! きれい!」私のリアクションに、うんうんと満足げな様子のふたり。
「これは70年前のもの。今でも作ろうと思えば作ることができる。上等の一番細い糸をたっぷり使わないといけないけど、こんなのが作れる工場はうちしかない。オートクチュールのデザイナーから注文をもらったこともあるんだよ」と社長。
「さて、あなたはどれにするの?」とマネージャー。
困った。

【 レース編みの工場を訪ねて 】

4、レースはこうやって作ります

4-R0014137.jpg
注文をして作ってもらうほどの自信はない。
そこそこロット(最低の注文量)はあるし、チロリアンテープならまだしも、レースがどれぐらい売れるか不安だし、輸入する際の関税が高いしで、思案。
オーダーはさておき、工場見学をお願いした。
遠くで「ガッシャン、ガッシャン」と音が響いている。
作業所のドアをあけると丸い機械が何十台と並んでいる。
一定の振り幅で、右へ「ガッシャン」、左へ「ガッシャン」。
丸い機械の中心に向かって糸が集まり、模様となって編み上ってゆく。
白い糸がかけられた機械からは白いレース。
機械編みのレースだから、こんなふうに金属の機械が並んでいるのはあたりまえだけど、繊細なレースがこんな無骨な機械から生まれてくるというのが、ちょっと不思議だった。
でもこれはとても古い機械らしい。
世界中で一番古い現存するレースの会社として、どこまでできるか? 
社長もマネージャーも、自分の村の大切な産業を守ろうとがんばっているそうだ。

【 レース編みの工場を訪ねて 】

5、新しい機械のこと

5-R0014149.jpg
会社のHPには日本語の説明がある。
隣村にある会社に日本人がいて、マネージャーの知人でもある。
お願して日本語のページを作ってもらった。
イタリア語も、フランス語も、デンマーク語も、ほかにも数カ国の言葉でサイトを見ることができる。
世界中のたくさんの人に見て欲しいからだそうだ。
展示会に出展して売上を伸ばす努力をしている。
でも、やっていないというか、あえて取り入れていないこともあるそうだ。
それは最新の機械を入れること。
日本製の、早くてきれいに仕上がる最新のマシーンがあり、コストを考えるとそっちの方がよさそうに思えるけど、使わないことにした。
「古い機械でしか出せない味わいがあり、それがうちのレースの最大の特徴だから
そんな風に言っていた。
その味わいってなんだろう? 
「見る人が見たら必ずわかります」
「モラビア地方の民族衣装にはレースは必需品。独特のいろんなモチーフのレースがあって、昔は手で編んでいたのを機械で織るようになりました。伝統を守るためにも、村の産業を守るためにも、この会社は必要」と、熱く熱く語ってくれた。

【 レース編みの工場を訪ねて 】

6、これがソフトです

6-R0014134.jpg
「織機の裏側にまわるとおもしろいものがあるから見てごらん」と言われ、回り込んでみた。
穴のあいたカードがつながって、流れにのって順番に動いている。
これ、見たことある!
チロリアンテープの工場にあった!
「この織機にレースを織らせるソフトですね」と私。
「そうだよ。これがないと織機はレースの模様を作ることが出来ないんだよ」と社長。
オルゴールの原理だ。
カードの穴の空いているところで、決まった位置のボビンが動き、その糸が模様の一目になる。
このカードがとにかく大事。
ベテランのおじさんが作っているのだけど、一目ずつ拾ってパンチングマシーンで穴をあけ、ちょっとのミスも許されない作業で、根気と集中力が必要。
目が疲れるし、なかなか難しいらしく、今のところ跡継ぎがいない。
だから工場では、昔からあるのを大切に大切に使っている。

【 レース編みの工場を訪ねて 】

7、売れ筋のレース

7-R0014139.jpg
売れ筋を聞いて見せられたのがこちら。
これは編み上がったばかりのレース。
赤と紺の間にあるグレーの糸は仕付け糸みたいなもので、これを切って2種類のレースになる。
模様が同じで細い幅なら、1台の機械で一度に2色作るなんてこともできるらしい。
細幅で白じゃなくて色ありで、使いやすそうな模様のレースの動きがよいそうだ。
そうそう、クノフリークが欲しいのがまさにそんな感じ。
白やベージュのレースは、日本ではそこそこのものが安く売られていて、わざわざチェコで買うには模様や作り方に特徴がある方が欲しい。
多色使いのレースはあんまり見掛けないし、前にブレスレットに加工したらかわいかったからぜひ手に入れたい。
「若い人はやっぱりそうよね」とマネージャー。
古いレースはほとんどが白、生成り、ときどき黒、ほんのたまに薄いピンクとか。
さらに「色のレースもいいのだけど、私はやっぱりレースらしい白や生成りが好き。
昔の凝ったステキな柄を白糸で復刻したいものだわ」と言っていた。
見本帳にあった古い模様を思い出して、2人でうっとりした。

【 レース編みの工場を訪ねて 】

8、模様の作りかた

8-R0014155.jpg
動く織り機の音でガチャガチャとにぎやかな部屋を出て、隣の部屋へ。
そこには一台の機械がぽつんとあるのみ。
パンチングマシーンで、レースの模様のパターンを作るのものだ。
この機械を操っているおじさんは今日は出勤してなくて、作業の風景は見られなかった。
社長がやってみせてくれようとしたのだけど、苦笑いしてすぐにあきらめてデモンストレーションはなし。
方眼紙に書かれた模様どおりに厚紙に穴を開けるという、簡単な作業だけど、なにせひと目ずつ拾っていかないといけないので、注意力がいる。
根気もいる。
目が疲れそうだ。
間違えたらもう一回最初からやり直し。
集中しないといけないので、この部屋はこの機械1台だけで、おじさんが籠るようにしてコツコツと仕事を進めるらしい。
チロリアンテープの会社で同じ仕事をしていたおじさんも、似たような状況だったな、たしか。
思いっきりアナログな方法が、チェコのレースをささえている。

【 レース編みの工場を訪ねて 】

9、いつでも作れるように

9-R0014143.jpg
パンチングマシーンのお次は、サンプルのストックルームを案内してくれた。
これは糸が集まって、レースになって出てくる編み機のまん中の部分。
主なデザインは全てこの状態で保存してあるそうだ。
機械の一部ごとそっくり置いてあるのにはおどろいた。
ずらずらと並ぶ様子は圧巻。
「これさえあればいつでも作れるからね」と、社長の言葉。
社長とマネージューは、不振に落ち入っていた村の大切な産業を守るために、他所で働いていたのを止めてこの会社にやってきた人たちらしい。
もちろんこの村の出身者。
語学、経営学を学んだ人たちで、いわば会社を立て直し中。
展示会へ出展し、海外に向けてチェコレースをアピールし、HPを作り、中国産のレースと戦っているそうだ。
もともとは民族衣装の一部として使うと言う需要があったのだけど、それもどんどん減っている。
頼まれれば衣装用の、特別な模様のレースをたった数メートルで作ることもあり。
一方、大量に注文をくれる服飾関係の仕事なんかにも積極的に取っていきたい、と言っていた。


Copyright © 1999-2010 CHARKHA All Rights Reserved.